#002 熊本 浩志監督 「野球脳」P3




「勝つチームを作る為に監督に専念した」


編集長

熊本監督も年齢的には普通に考えると十分プレイヤー、それがあえて出ずに監督業でここまで夢中になれているのは?

熊本監督

私自身の中のプライオリティーが変わってきたんでしょうね。 選手もそう感じているように、チームで、皆で優勝したいのがあり、その役割を考えたら自分が出る事よりもやっぱり…。 プレイヤーと監督をやるって凄く難しいなと思ったんですよね、やっぱり選手目線と監督目線って全然違うのですよ。 監督の思考は「最悪のリスクを考えながら手を打たなければならない事」ってあるじゃないですか、それは選手の視点じゃ無い訳です。 選手は常に前のめりで、だけど監督は引いて俯瞰(ふかん)して見るのが必要なので、それを同時に出来ないなと思ったんですね。 去年はまだプレイヤーに未練があり、やっていたのですが去年の6月頃に、怪我で松葉杖になって。 流石にダメだと思いながら、去年が終わって、肝心な所で負け続け、結局1つもタイトルが取れなかった。 それで来年どうやって勝つか、来年3年目だからいよいよ俺たちも結果問われると、去年一年間のデータの分析を色々始めた訳です。 何で俺達こんなに負けたのか、しかも肝心な決勝トーナメントの一回戦とか。 「よし」と意気込んで行ったはずなのに、あえなく完封負けとか。 ノーヒットノーランとか。「何だろコレは?」という話になり。 で普通だったら、もっと「一体感」がとか抽象的で漠然とした事を野球選手って言うんですが。 もう少し全然違った側面から見てみようと思いデータ引っ張り出しました。 そうすると色んな事が見えてきて「ひょっとしたらこれが原因じゃないか」「意外とこうした方がいいんじゃないか」とか、皆が思いこんでいたのとは全く違った要因が見えてきたんですよね。  それをオープン戦から導入し始めました。 「ポイントは球数だ、カウント2-3を作るやつが一番俺の中での評価が高い、2-3を作る為にはファールを打てなきゃいけない、だからファールを打つ練習をしよう」「今日一番ファールを打ったヤツが監督賞」って言うと。 皆「えぇー」みたいな感じでした(笑) でも軟式だと狙って打てないんです、ファールって。 しかし、自分達が今までやってきた野球の延長線上にない新しい野球を取り入れることによって、メンバーの野球に対する先入観みたいなものを取り払うことって草野球では大事な気がしますね。 特にうちのメンバーは各々がかなりのレベルでやって来てるから、プライドだってあるわけです。 だから同じ野球だとディティールで対立することが出てきちゃうんですよ。 そうなるとチームは厄介でしょ?これがオールスターチームが意外にもろい原因だと思うんですよね。  だからあえて、「今までと違う野球にチャレンジする」ってことで、ベクトルを合わせることが出きるんだと思うんですよね。


「観客を300人動員すること!」


編集長

ところで、過日のサンスポ野球大会決勝戦の時が印象的で、最大のプライオリティーは「勝つ事」ではなく「観客を300人動員することだ!」とおっしゃっていましたが。

熊本監督

皆さん「エッ」て思うかもしれないですが、300人の観客を入れて誰も試合に負けようとは思わない。 「絶対勝つぞ!」なんてメッセージが不要になるでしょ。 結果試合には負けて皆悔しいけど、その後全員で写真撮り、その写真を見た時に全員が同じような事を言ったんですね。 「スゲーいい写真、野球やってきてこんないい写真って初めて」 皆緑色のTシャツ着た観客と選手が一緒に西武ドームをバックに写真を撮って。 負けたチームの写真じゃないなって。 その時に思ったのは、自然と最高の大人の遊び場を作っていて、そこで遊んでいるだけなんだと。 野球なのですが、たかが草野球。だけどその中で最高の遊び場を作って。そこに皆がやって来て、応援してくれて。 野球をしている雰囲気を楽しんでいるというか…。 プライオリティーが「自分が打つか」より「バンバータが、チームが」に変わって。 普通は試合に出れなくなったら、その選手は草野球に来ないですよね。 出れない選手が沢山いるのに皆集まるんです。 他のチームは大体ベンチを見ると10人程なんですがバンバータは20人程入っていて必ず出られないヤツらがいるのに、それでも面白がって来るんですね。 そこが明らかに他のチームとは違います。バンバータが勝てば何でもいいっていう。


「インパクトのあるチーム名のネーミング」

「チームのクリエイティブデザイン」

「インターネットを駆使すること」

 この3つが重要。



編集長

勝つことでモチベーションは当然あがると思いますが、他に草野球なりのモチベーションのあげ方などありますか。

熊本監督

選手は当然だけど、いろんな人や会社、つまり世の中を巻き込んじゃうことじゃないかと思います。 「たかが草野球」だけどファンがいるとか、他のチームからの憧れを生み出すとか、決して試合に勝つことだけになっちゃダメですよね。 そのためには「インパクトのあるチーム名のネーミング」「チームのクリエイティブデザイン」「インターネットを駆使すること」この3つが重要になってきます。 ネーミングは非常に重要なんですよ。 ここで失敗してしまうと、草野球でも日本一にならない限り、注目されることもなくなってしまいます。 ネーミングの仕方は本当に自由なので、面白いチーム名でも、実在するチーム名から拝借してもOKです。 ただ、長すぎたり、読み方がわからなかったりなどは注意した方が良いですね。 次のチームのクリエイティブデザインも重要。 簡単に言えば、チームのユニフォームなどグッズの製作のことです。 ユニフォームは外向きにも内向きにも重要で、他のチームから憧れの目で見られると同時に、メンバーの心を掻き立てるんですよね。 なので、チーム発足時から用意しておくべきものです。 発足時から用意しておくことで、メンバーもチームに所属していることをリアルに感じられます。 草野球なのに「憧れ」を作り上げてみるっていう世界を作りたかった。 「バンバータに入りたい」みたいな。 しかしこの2つだけでは足りなくて、インターネット、WEBを利用していくこともモチベーションをあげるために必要なんです。 チームのWEBサイトはチームが注目される重要な手段です。 外向きには、試合結果などチームの情報が発信されますし、内向きには、注目されることで、その視線をキープしようと自ずとメンバーのモチベーションもあがります。 この3つをチーム発足時から、実行していくことがチームのモチベーションをあげる重要な要だといえますね。


熊本 浩志監督(写真:左)と草野球オンライン編集長(写真:右)


編集後記:


『「たかが草野球」で人生が変わる』の著者でもある熊本氏。 本業は、家電の固定概念を打ち破るニュープロダクトととして様々な業界の注目を集める株式会社リアル・フリートの代表取締役。 いわゆるビジネスのスペシャリスト。しかし、取材を通じて感じたことは、氏の球団運営は、ビジネスで培ったマネジメントノウハウを草野球球団に活かしているというよりは、草野球球団で培ったノウハウをビジネスに活かしているのではと思ってしまうくらいの卓越した「野球脳」を披露していただいた。 「野球は人生そのもの」と言い切る氏の言葉の意味は想像以上の深さを感じた。 「中途半端は嫌い」という氏の思いがそのまま詰め込まれているチーム「東京バンバータ」。 究極の「大人の遊び」なのかもしれない。そんな東京バンバータの試合が観たくなった。(編集長)


インタビュー/荒木重雄(編集長) 写真/福田清志


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