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2011年スペシャルインタビュー【桑田真澄氏】:第一回「桑田真澄という選手はたいした選手でなかった」からここまでできた。


この記事は2011.01.19にteams前身サイト草野球オンラインのに掲載されたものを再掲載しております

第一回:「桑田真澄という選手はたいした選手でなかった」からここまでできた。




編集長

現在の日本野球界について、どんなところが課題で、また、どのように変えていくべきだと思いますか?

桑田氏

僕は日本の野球は「世界一」だと思っています。同時に野球にたずさわっている人全員が同志であり、仲間だと思っています。

僕がパイレーツでプレーしていた時にも、メジャーの関係者から「日本の野球育成システムは素晴らしいね」とよく言われました。 しかし、そんな日本野球界でも良い意味でも悪い意味でも課題は山積だと思っています。

特に少年野球をはじめジュニア層の育成システムについて、より改善していく必要があると感じています。 これまでのやり方の良い部分は継承しつつも、今の時代にあった指導方法や環境を整えていくことが求められているのだと思います。

そのためにはまず我々大人が先頭にたって実践していくこと。子供がプレーに集中できる環境を整える事が大事ですね。その環境を整えることができるのは大人しかいません。そういう意味でも指導者や野球をプレーする大人が今、最も大切なファクターだと思っています。

また、指導方法も大変重要です。野球界でも時代の変化は著しく、昔は分からなかったことでも今はどんどん解明されており、それに伴って科学的トレーニング方法の導入が進んでいます。

例えば、僕たちが高校生の頃までは、練習中の水分補給はNGでしたが、今は逆に「積極的に水を飲みさい」と、指導されている時代です。 また、昔はピッチャーは「肩を冷やすな」と言われて、登板直後でも夏でもとにかく温めるために長袖のインナーを着ていましたが、今では当たり前のように登板後はアイシングします。だからこそ、指導に携わっている大人たちが、きちんと勉強して皆で実践することにより、子供たちに正しいトレーニング方法を伝えていくことが大切だと思います。




編集長

桑田さんのその身体能力は少年時代から突出していたのですか?

桑田氏

僕自身は、ズバ抜けた体格とか技術を持っているとは思ってなくて、どちらかというと体が小さいことにコンプレックスを持っていたぐらいだったんです。 自分自身を客観的に分析した結果、桑田真澄という選手はたいしたこと無い選手だと。

編集長

そんなことはないと思います(笑)

桑田氏

いえ、本当にそうなんです。僕がPL学園で清原和博、田口権一という190センチクラスの選手2人を目の当たりにした時に「普通に野球をやっていては自分はこのまま終わってしまうな。彼らと競い合っても駄目だ。自分は自分らしさを大切にしよう」と強く感じました。そこで自分らしさとは何かを考えた時、それは「総合力」だと言う答えにたどり着いたんです。

だから僕は、投げて、打って、走って、そしてメンタル的にも高みを目指して、その総合力で勝負しようと思ったんです。

だからこそ、野球以外のことも大切だと感じて、そこから勉強をするようになり、色々と本を読むようにもなりました。その結果、判断力、忍耐力、分析力、そういった色々なことを学べたと思います。

今思えば、PL学園で彼らと同じチームになったことは何かのめぐり合わせを感じますし、あの時彼らに会っていなければ、今の自分はいなかったかもしれません。

編集長

野球をやっていた人が野球で鍛えた根性、努力を勉強や仕事にぶつけることはよく聞く話ですが、逆に勉強を野球に取り込む発想からスタートしたのですね。

桑田氏

そうです。体が小さかった僕が、なぜ高校野球でストレートとカーブの球種だけで戦ってこれたかというと、それは勉強で培った分析力も大きかったと思います。

例えば、相手のバッティングフォームがダウンスイングであった場合、気をつけたのは高めのストレート1箇所だけを注意し、低めのストレートと低めのカーブを投げておけば、まず打たれることはない。

逆にアッパースイングの打者には、初球に真ん中高めのストレートを投げると見事に打ち上げてくれる。そういった体験から投球ルールを見つけ出すこと、これもやはり勉強から学んだことです。




編集長

高校1年生の段階で相手のバッテイングフォームを意識して投球を組み立ててたんですか?そのような視点で考えられたのはなにかキッカケがあったのですか?

桑田氏

はい。ある日、中学校の授業中に先生の行動の中で面白いことに気がついたんです。

それは、試験に出る問題は、必ずと言っていいほど先生が黒板をポンポンと2回叩いていることに気がついたんです。ちょっとした動作なんですが、そういう癖が無意識に出ている先生がいた。

それで、「あー、これテストにでるんだなぁ」と思ってチェックしていると見事にテストに出てくる。

そこで今度は他の先生の行動も注意深く見てみると、「よーく覚えておいてくださいよ!」というフレーズを言った箇所はやっぱりテストに出る確率は高かった。

こうして、人のちょっとした仕草や言葉からも、癖や傾向を見て取れることが分かり、試合で打者心理を読む時にとても参考になった。

編集長

たしかに自分の行動を振り返っても、自分が本当に言いたいことは、自然と繰り返したり、無意識に何か動作をしているような気がします。

桑田氏

僕は中学生の時に、将来はPL学園、早稲田大学、読売ジャイアンツという目標を立てていたので、小学生時代に苦手だった勉強も頑張って、良い成績を取らなければいけなかった。 当時の野球部は毎日朝練があり、放課後も遅くまで練習していたので、勉強する時間があまりなかった。 しかし、時間がない中で、毎日、効率的に合理的にコツコツと勉強したことで成績が上がっていった。

目標を達成するためにどうすればいいか?

僕なりに一生懸命考えていろんな方法を試し、自分流の勉強法を模索したことで、いろんな事に気が付くことができました。

無意識だったのかもしれませんが、中学校の先生もちゃんと僕達にサインを出してくれていたんですよね(笑)

そういった経験もあり、観察すること、分析すること、仮説と検証を繰り返すことの重要性に気がついて、それを野球でも活かせる様になったんだと思います。




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